Share

第2話 冒険人足寄せ場にて

Penulis: 瘴気領域
last update Tanggal publikasi: 2026-07-13 11:43:47

「あの、私、稲荷屋いなりやコガネって言います。あなた様は……」

「私は大場カナコ。カナコでいいよ」

「カナコ様ですね! 印地打ちの技、お見事でした。どこか名のある道場で習われたのですか?」

「いんじうち? 石投げのこと? 水切りなら得意だよ」

 私は適当な石を拾って川に投げる。石は四回ほど跳ねて、ぼちゃんと沈んだ。記録的にはいまいちだが、土手から投げてこれならまあ上等だろう。

「わあ、すごい! どうやるんですか?」

「うんとね、なるべく平べったい石を探してね。それで、手首のスナップをきかせて回転させる感じで投げるんだよ」

「すなっぷ? なるほど、それが奥義なのですね!」

 いまひとつ会話が噛み合わない。不思議ちゃんってやつだろうか。狙ってやっているならあざといが、そういう雰囲気でもない。どうやらホンモノのようだ。連絡先を聞かれたら断ろうと心に決める。

「そのお着物も素敵ですね! 近頃の江戸では、そういうのが流行りなんですか?」

「流行ってはいないんじゃないかなあ。学校指定のジャージだから、着てる子は多いかもしれないけど」

 そのうえ、拾い物だからなあ。世境中学校という刺繍がされていたが、さすがにそれは取り去っている。

「じゃーじと言うのですね! それがカナコ様の流派の道着なのでしょうか?」

「いや、別に流派とかそういうのじゃないかなあ」

 噛み合わない会話を続けつつ歩いていると、木造の橋が見えてきた。時代劇の撮影でもしているのか、その上をちょんまげ姿の人々が行き交っている。世境橋に住みはじめたのは去年の冬からだが、近場にこんな観光スポットがあったとは知らなかった。いつも石を拾いながら歩いてたから、案外行動範囲が狭かったんだよなあ。

「着きましたよ、ここが世境橋です!」

「うん、ありがとう。助かったよ……って、え?」

 思わず聞き返してしまう。今いるのは世境橋ではなく、木造の時代劇めいた橋だ。しかし、嘘をつかれたわけではないようで、欄干にも「世境橋」と書かれている。同じ名前の、別の橋に連れて来られてしまったのだろうか。

「あの、何か間違っていたのでしょうか?」

 コガネが金色の目をうるませて申し訳なさそうな顔をしている。ご丁寧に頭の耳もぺたりと垂れていた。不思議ちゃんで気合の入ったコスプレイヤーだが、人間はできているようだ。

「うーん、私が行きたかった世境橋とは別なんだよね」

「ごめんなさい。こちらには来たばかりで、このあたりには詳しくなくって……」

「謝ることはないよ。私だって同じ名前の橋が近くにふたつもあるなんて知らなかったし」

「私、道を聞いてきますね!」

 コガネは道行くちょんまげに道を聞きに行った。撮影中なら迷惑だろうに……と思ったが、普通にやり取りをしている。なんだろう、撮影じゃなくコスプレイベントか何かだったのだろうか。コガネもそれの参加者だったのかな?

 コガネが道を聞いている間に、こちらはこちらでやれることをやっておこう。デイバッグからビニール袋に入れたスマホを取り出す。浸水や画面割れが心配だったが無事なようだ。電源を入れ、野良Wi-Fiが飛んでいないか確認するが、鍵付きのものすら引っかからない。バッテリー温存のために、また電源を切ってバッグに戻す。

 すると、コガネがちょこちょこと戻ってきた。

「すみません、何人か聞いてみましたが、みんな世境橋はここしか知らないって……」

「うーん、ダメかあ。一度街中に行って地図を確認した方がいいかなあ」

「町に行かれるんですか? それなら私もお供します!」

「別に一人でもいいんだけど」

「道を尋ねるなら寄せ場に行くのが一番ですよ! 寄せ場までの道ならちゃんとわかりますから!」

 コガネは返事も聞かず歩き出してしまった。無視して後でまたばったり会ったら気まずいし、ひとまず着いていくことにする。しかし、寄せ場ってなんだろう? 時代劇とかで聞いたことがある気はするんだけど。

 それにしても、町並みが変だ。それこそ時代劇みたいな木造の家ばかり続いていて、コンビニなんか一軒も見当たらない。通行人は老若男女問わず和服だし、いくらコスプレイベントにしても大掛かり過ぎる。

 ひょっとして、私を狙う借金取りが罠を仕掛けてきたんじゃないか……と不安になる。さんざん暴れてメンツを潰しただろうし、あっち系の人はメンツのためならコスパ度外視で動くって聞いたこともある。

 しかし、そうなるとコガネに違和感がある。あの不思議ちゃんはどう見ても善意だ。おつむは残念だが悪意は感じられない。ひょっとして、悪い男に捕まって騙されていたりするのだろうか。ヒモも代表的なやくざ稼業のひとつだ。ほんの行きずりではあるが、そうだとすればちょっとかわいそうな気がする。しかし、そういうのにハマった人は「目を覚ませ!」なんて説得しても通じないしなあ……

「着きましたよ! ここが世境よざかいの寄せ場です!」

「あっ、うん」

 とりとめもないことを考えていたら、いつの間にか目的地に着いていたらしい。間口の広い木造二階建てで、大きな暖簾のれんが掛かっている。紺地に白抜きで、丸に「冒」の字がダイナミックに大書されている。ひっきりなしに人が出入りしているが、全体的に人相が悪い。顔だけ見ればやくざなのだが、その頭にはちょんまげが乗っているからなんともアンバランスだ。時代劇の悪役専門の事務所って言われたら納得するけど。

 いかにも怪しげな店(?)なのだが、コガネは物怖じもせずに暖簾をくぐる。私もそれについて中に入っていった。煙草の煙と汗が混ざったむわっとした空気に迎えられる。

 薄暗い店内は広い土間になっていて、板壁いっぱいに張り紙がされている。人相の悪い男がたちがそれに群がってがやがやしていた。ドヤ街の日雇い募集センターみたいだ。私も行ったことがあるけど、未成年では仕事が受けられなかったので退散した思い出がある。

「いよォ、狐っ娘じゃないかい。遅かったが、ちゃんと仕事は済ませたのかい?」

 キョロキョロしていると、奥から女の声が聞こえてきた。やっと暗さに慣れた目でそちらを見ると、一段上がった畳敷きに煙管きせるを手にした女が座っている。派手な柄の着物を着崩した姿は花魁おいらんみたいだ。

「はい! ちゃんとマシラオニの巣穴を突き止めてきましたよ!」

「そりゃ気張ったね。詳しい話を聞かせてくンな」

「はい! あ、その前にちょっと姐さんに聞きたいんですけど、この辺に世境橋って他にありますか?」

「あン? 世境橋っつったら今も昔もひとつしかありゃしないよ。って、そっちにいるのはお客人かい? 変わったべべ・・を着てなさるお嬢さんだねえ」

 花魁の視線がこちらに向かったので、視線を逸らさずにちょんと頭を下げる。コガネとは知り合いのようだが、いかにも怪しげな女だ。油断はできない。

「はい、マシラオニに追いかけられてた私を助けてくれたんです! 瞬きする間に3匹もやっつけっちゃって! すなっぷ・・・・っていう印地打ちの達人さんなんですよ!」

「へエ、じゃあ依頼人じゃァなく、人足の方かい。若けェのにてえしたもんだね。仕事を探してンなら、うちの人別帳にも登録してきなよ」

 花魁が手招きするので、警戒しながら近づいていく。

「なんだろうねェ、この娘は。若けェのに野良猫みたいに。まァ、いい冒険人足はそんなのばっかりだけどねェ」

 ぷかりと紫煙を吐いた唇が笑う。なんともどぎつい真っ赤な口紅を塗っていて、趣味が悪いなあと思う。そして近づくと化粧と煙草の臭いが混ざって鼻が曲がりそうだ。しかし、いまはそんなことを気にしている場合ではない。確認したいことがある。

「ええっと、私、まだ十四歳なんですけど、ここでは仕事が受けられるんですか?」 

 フリマでの石売りは順調だが、売上が不安定なのだ。日当仕事が受けられるアテができるのならそれに越したことはない。決まった時間働いて、決まったお給金がもらえる約束があるというのは大きな安心につながるものなのだ。

Lanjutkan membaca buku ini secara gratis
Pindai kode untuk mengunduh Aplikasi

Bab terbaru

  • ホームレスJCの大江戸繁盛記~現代知識を駆使して一攫千金を目指します!~   第33話 今年もガチでよろしく頼むよ!?

    【稲荷家コガネの日記帳より】■嘉永3年。1月1日 今年も無事にお正月を迎えられました。江戸へ来てからははじめてのお正月です。初日の出を拝んで若水を飲んでから寝ようとしたら、カナさんから「初詣に行こうよ」と誘われました。 そういえば、最近は二日にお参りに行く習慣が江戸の街で流行っているらしいです。カナさんがやってきた未来の江戸(本当は東京って名前になっているってこっそり教えてくれました)では、1月1日にお参りに行くのが普通になっているんだそうです。 元日にお出かけなんてしても面白いことは何もないですし、神様だって元日ぐらいはゆっくりされていると思うのですが、未来の風習と言うからにはきっと何か理由があるんでしょう。 付き合って初詣に行ってみたのですが、肝心のカナさんは「屋台のひとつもない!? というか人っ子一人いない!? 一体どうなってんの!?」と文句を言っていました。 うーん、元日から働く人なんていないと思うのですが、未来の日ノ本は1年中休みなしだったのでしょうか? そう考えると、カナさんがやたらとあれこれやりたがるのもわかる気がしました。■1月2日 眠りから目覚めたように、早朝から江戸の街が活気づいています。最近はすっかり慣れっこになっていましたが、この騒々しさが江戸の街の色なんですね。私も修行をがんばらなくちゃって気持ちになります。 行商から買った小鰭のお寿司を食べながら、カナさんと一緒に街を歩いていると遠くから賑やかな演奏が聞こえてきました。豊作を願う鳥追の人たちですね。実家の方では子どもたちが主役でしたが、江戸では大人の女太夫が数人連れでやっているようです。三味線や胡弓を弾きながら歌っています。♪あの鳥ャどっから追ってきた♪信濃の国から追ってきた♪何もって追ってきた♪柴抜いて追ってきた♪一番鳥も二番鳥も♪飛び立ちやがれホーイホーイ♪ホンヤラホンヤラホーイホーイ 思わず楽しくなって体を揺らしていると、カナさんが「正月から辛気臭え!」なんてことを言いながら三味線を奪い取り、すごく騒々しい曲をかき鳴らし始めました。 商店の店先にある空樽を叩いたり、異国の言葉で歌い出したりとやりたい放題です。しかし、これもまたなんだか楽しくなって、体が自然と揺れてしまいます。気がつけば、大勢の人たちで囲まれ

  • ホームレスJCの大江戸繁盛記~現代知識を駆使して一攫千金を目指します!~   第32話 大怪獣ゴメラ江戸に現る

     尖った岩山が海を引き裂き、その下にあるものが明らかになった。 爛々と赤く燃え上がる巨大な双眸。自動車も丸呑みに出来そうな巨大な口腔。海上に出ただけでも100メートルはゆうに超える巨大な上半身。輪郭は直立するワニのよう。最初に見えた岩山は、この怪物の背ビレだったのだ。「なにッ!? あれはまさしくゴメラではないのかッ!? まさか二百年も早く現れるとは、この象山の慧眼をもってしても見通せなかったぞッ!!」「あれがゴメラ……! わたくしは船に戻って砲撃の準備をしマスわ!」 象山とペルリが色めき立っている。辺りにいた幕府の軍隊も、ペルリが連れてきた水兵も大騒ぎだ。私は私で「マジかよ!?」という顔になっていることだろう。瓢箪からコマどころではない。瓢箪から大怪獣が現れてしまった。どうしたらええねん、これ? ――豪雄雄雄雄雄雄雄雄雄雄!! ゴメラの口から青紫の光線が吐き出される。それはさながら天を貫く巨大な柱。雲が割れ、空気が焼け、辺り一帯にオゾン臭が漂う。やべーよ、熱線吹いたよ。ガチモンの大怪獣だよ。「わぁぁぁあああ!? にっ、逃げろ!」「あ、あんなの勝てるわけがない!」「ぶ、武士の戦場はケダモノと戦うことではないでござる」「馬鹿者どもッ! 早く持ち場につかぬかッ! この象山が発明した超電磁エレキテルキャノンの力があれば必ず勝てるッ!」「あなたたちも勝手に逃げては駄目デスの! ステイツの威光をあのモンスターに見せてやりマスの!」 象山とペルリは悲鳴を上げて逃げ惑う兵士たちを叱咤するが、誰も話を聞いていない。まあそりゃそうだろう。あんな大怪獣に生身で挑める人間などいるはずもないのだ。 私にしても、いつまでも固まっている場合じゃない。少しでも早く逃げ出さなければ。象山とペルリにはせいぜいがんばってほしい。なんとか粘って私が逃げる時間を稼いでほしいものだ。しかし、避難に使えそうな船はみんな逃げ出した兵士や人足で押し合いへし合いになっている。くそっ、いっそ海飛び込むか……。 そんな覚悟を決めた、そのときだった。『ちょろちょろやかましいんじゃ、ゴラァッ!!』「へ?」 どすの利いた声が待機を震わせた。その場にいた全員の動きが止まる。そしてゴメラがざっばーんざっばーんと大波を立てながら歩いてくる。『何いたずらし腐ってんのや、

  • ホームレスJCの大江戸繁盛記~現代知識を駆使して一攫千金を目指します!~   第31話 お台場

     江戸湾の沖で、埋立工事が始まった。 土砂を満載した船がひっきりなしに行き来し、もっこを担いだ男たちが威勢のよい掛け声を上げている。「よしッ! 設置場所はここでよかろう。どうかな、大場君ッ!!」「はい、とても埋まってますね」「フハハハハ! そうだろう、そうだろうッ!」 そして最初に出来上がった埋立地に連れて来られたのが私である。この象山とかいう先生は、遠い未来に海から襲い来るであろう大怪獣に備え、江戸湾に砲台を作り上げてしまったのだ。そういえば、お台場ってもともと黒船に備えた砲台の跡地だったっけ……と曖昧な記憶をたどる。 この世界ではアメリカと平和的に開国にいたり、友好的な関係を構築できている。なんならポケニンの影響で日本は超人的な能力を持つサムライとニンジャの国として恐れられてすらいるらしい。巨費を投じてこんな砲台を作るのなんてはっきり言って税金の無駄遣いなのだが……。 ま、私の財布が痛むわけじゃなし、別にいっか。穴を掘って埋めるだけでも景気対策になるのだと、どっかの経済学の先生も言っていた気がする。「では、これより試射実験を開始するッ! よく見ていてくれたまえッ!」「はい、よく見ていてくれたまえます」 そんなことよりも問題は、目の前にある巨砲である。二本の鉄柱が突き出しており、バチバチと青白い電流をまとっている。「ではゆくぞッ! 象山式超電磁エレキテルキャノン、発射ッ!!」 バシュンッと空気が切り裂かれる音。ソニックブームで弾道にコーン状の白い雲がいくつも出来ていく。水平線が爆発し、高さ数十メートルにも及ぶ水柱が立ち上がる。遅れて爆風がここまで届いて髪をバサバサと揺らした。「どうかねッ、大場君ッ! この象山砲の威力はゴメラにも通じると思うかねッ!」「はい、効果はバツグンだと思います」「フハハハハ! そうだろう、そうだろうッ! この象山がいる限り、神州日本の平和は誰にも脅かさせんよッ!!」 私の作り話を真に受けた象山は、とんでもない超兵器を作り出してしまった。彼の説明によるとエレキテルの力を使って砲弾を加速し、火薬式の大砲ではありえない初速と威力を実現しているとのことなのだが……それってレールガンだよね? 現代でも実験段階だった兵器だ。なんでそんなものを開発できるんだよ。頭がおかしいのか? いや、おかしいんだろうな。「いまは大き

  • ホームレスJCの大江戸繁盛記~現代知識を駆使して一攫千金を目指します!~   第30話 ウルトラスーパーミラクル暴れん坊ショーグン

    「時は西暦20XX年! 二百年後の日ノ本の国、ネオ江戸シティは恐怖のどん底に叩き落されていた……!」 ベンベンっと扇子で机を叩くと、庭先までびっしりとすし詰めになった聴衆がごくりと息を呑む。「江戸湾から現れ出たのは頭の高さは五百尺を超える大怪獣! ぎょろりと真っ赤に燃える目に岩山の如き荒々しい肌。どしんどしんと歩くたび、家屋が潰され大地が揺れる! その全貌はさながら直立する巨大な鰐! 火を吹きながら歩く様子は浅間山が生命を得て動いたが如くっ! その名も大怪獣<ゴメラ>! 未曾有の危機に、ネオ江戸っ子たちはなすすべもなく逃げ惑う!!」 ベンベンっ。「地球防衛火消し『バイオロジーサイバネティックめ組』は秘密兵器を駆使してこの大怪獣に立ち向かうっ! まず出動したるは超電磁エレキテル重戦車っ! にゅっと突き出た砲口からまばゆい雷光が発せられ天をも焦がすっ! さしものゴメラもこれには……しかしっ! 白い雷光の向こうからぬうっと垣間見えるは不敵なる魔獣の凶相! 人類の脆弱さを嘲笑うが如く乱杭歯がびっしり生えた凶悪な口を開けると、紅蓮の炎が吹き出し超電磁エレキテル戦車を吹き飛ばすっ! 名状しがたい熱波が広がり、エターナル永代橋からジャパナイズ日本橋まで、ネオ江戸シティが一瞬で灰燼と化すっ!」 ベベンベンベベンっ。「もはやネオ江戸シティの……否、人類の命運もこれまでか……ネオ江戸っ子たちが絶望のどん底に落とされたそのときだった……。アイツが、そう、アイツが来てくれたのだ。さあ、皆様もご一緒に!」「「「「ウルトラスーパーミラクル暴れん坊ショウグーン!!!!」」」」 よしっ、聴衆の声が見事に揃った。みんな呼吸がわかってきたな。「そう! やってきたのは我らがウルトラスーパーミラクル暴れん坊ショーグン! 鮮やかなる金糸のマントを閃かせ! 真っ白な天馬にまたがって! 大空を駆けてやってきた! ゴメラの目の前にシュタッと着地すると、即座に巨大化! 五百尺まで膨れ上がり、憎っくきゴメラの顔面に右拳、左拳、右拳、左拳、右拳、左拳……拳の嵐を叩き込む!! ウルトラスーパーミラクル暴れん坊ショーグンの七十七の必殺技のひとつ、<ウルトラスーパーミラクル暴れん坊フィストストーム>が炸裂したあっ!!」 聴衆が「わあっ」と盛り上がる。やっぱりヒーローの登場シーンはど派手に

  • ホームレスJCの大江戸繁盛記~現代知識を駆使して一攫千金を目指します!~   第29話 吾輩は次代を照らす偉大なる思想家、佐久間象山!

    「おのれ大場カナコぉぉぉおおお゛! ぶち殺すっ!」「うわー、怖い。狂犬病の犬みたいですね。お奉行様、怖いので帰っていいですか?」「待て、まだ何も話しておらぬではないか。鳥立、お主も静かにいたせ」 今日も今日とて元気にマシラオニ退治……と思っていたら、町奉行所から呼び出しを食らってしまった。なんでも流与の件で聞きたいことがあるそうなのだ。断るわけにもいかずやってきたら、お白洲で荒縄に縛られた流与とご対面している訳だった。 お白洲は白い砂利が敷き詰められていて、座布団代わりに薄い茣蓙が敷かれているだけだ。ここに正座をしていると結構痛いし冷たい。もう少し人権に配慮して欲しいものだ。まあ、ここには何度も来てるから、もはや慣れつつあるわけだが。「この贋金……いや、贋札と呼ぶべきか? どうやって作ったものかわかるか?」「わかんないっすねー」 座敷に座ってこちらを見下ろしているのは町奉行だ。1万円札をこちらに見せてくるが、作り方なんて私も知らない。というか、国家のトップシークレットなのだから知るわけがないのだ。「版画職人に見せたところ、これはとてつもない技術で作られているそうだ。複数を比べても寸分たわず瓜二つ。ただ南蛮文字だけが少しだけ違う。十年かかりきりになっても作れないと申しておる」「それは大したものですねえ」 南蛮文字というのはお札の通し番号のことを言っているのだろう。お札なんて普段まじまじと観察する機会はないが、めちゃめちゃ細かい意匠が正確に刷られていることぐらいは当然知っている。極めて稀にエラー印刷されたものが流通し、そういうものはプレミアが付いて高額で取引されているほどだ。「そこまでの技術があるなら、すでにある藩札を真似ることも容易だったはず。なぜ、わざわざ存在しない贋札を作ったのだと思う?」「わかんないっすねー」 そもそも、流与は贋札など作っていない。令和日本ならばきちんと通じる真正の一万円札である。いくら悪名高い皇國金融とはいえ、贋札作りにまでは手を出してないだろう。贋札は通貨の信用を毀損し、経済を破壊する爆弾だ。それは現代でも江戸時代でも変わらず重罪なのである。「そこで、そこな女を詮議したところ。奇妙な話を聞いた」「私たちは二百年先の未来から来たのよ! 大場カナコ、貴様もそうだ! どうせ未来

  • ホームレスJCの大江戸繁盛記~現代知識を駆使して一攫千金を目指します!~   第28話 時を駆ける借金取り

    「見つけたぞ! 大場カナコぉぉぉおおお!! げほっ、ごほっごほっ」 今日も今日とて寄せ場で仕事を探していると、ずぶ濡れの女が現れた。黒縁の眼鏡に黒いパンツスーツ。生まれたての子鹿のように全身をぶるぶる震わせている。あっ、唇が紫色だ。真冬だというのに御苦労なことだ。「毎度毎度マシラオニ退治ばっかりじゃ飽きちゃうよねえ。何か変わった依頼はないもんかねえ」「あのう、カナさん? 何か呼ばれてるみたいですけど……」「しっ! 目を合わせちゃいけません! きっとアブナイ人だよ」「大場カナコぉぉぉおおお!!」 無視しようと思ったら、目を血走らせながら走り寄ってきた。まったくもうめんどくさいなあ。取立屋の中でもこいつが一番しつこかったんだよな。「ふふふ、上手く逃げおおせたと思ったら思い違いもいいところだ。皇國金融債権回収部隊長、鳥立流与様からは決して逃れられん! げほっ、ごほっ」「オウ? ユーは誰デスカー? 私はビッグプレイス・カナと申しマース。ルヨさん、ハジメましてデースネー」「えっ、あれ? いやお前大場カナコだよな?」「カナコ? ノー、ミーはカナですネー。ナイストゥミーチュー」「な、ナイストゥミーチュー……?」 私は外人のふりをし、ルヨの手をがっちり握ってシェイクハンドした。こちとら仕事探しの真っ最中なんだ。こんなやつに関わっている暇などない。「って、そんなので誤魔化されるかボケぇぇぇえええ!」「あ、バレたか」「バレるに決まってんだろ! 皇國金融を舐めるなッッ! 貴様の債権74兆3,031億円! 耳を揃えてきっちり支払ってもらうぞ!! げほっ、ごほっ」「ほーん」 まさか時空を超えて取り立てに来るとは、まったく仕事熱心なことである。まあ、意外と言えば意外ではあるのだが、こういう事態が生じることは想定の範囲内だ。何しろ私がこの世界に流されて来たのだから、他の誰かがやってきてもおかしくはない。「あの……どこのどなたか存じ上げませんが、まずは体を拭いた方が……」 ぶるぶる震えるルヨを見かねたのか、コガネちゃんが手ぬぐいを差し出した。「むっ、これはすまん。見知らぬコスプレイヤーの人」「こす……?」 ルヨは手ぬぐいを受け取ると、髪をがしがしと拭き始めた。ふふふ、この反応から察するに、案の定こいつもまだ異世界に来たことを認識してないな。

Bab Lainnya
Jelajahi dan baca novel bagus secara gratis
Akses gratis ke berbagai novel bagus di aplikasi GoodNovel. Unduh buku yang kamu suka dan baca di mana saja & kapan saja.
Baca buku gratis di Aplikasi
Pindai kode untuk membaca di Aplikasi
DMCA.com Protection Status